個人事業主に所得補償保険は必要なのか

投稿者: | 2014年8月13日

個人事業主にとって一番不安なのが「もし突然の事故や病気で働けなくなったら」ということです。
普通の会社員であれば傷病手当金という制度により最長1年半まで所得が保障されます。
でも個人事業主にはそんな制度ないので、普通の会社員より不安は大きいのです。
そんな事態に備えるための保険として所得補償保険という保険があります。

例としてライフネット生命の就業不能保険を例にして説明します。

就業不能保険「働く人への保険」 特長 | ライフネット生命保険
http://www.lifenet-seimei.co.jp/product/disability/

もし、不慮の事故や病気などの理由によりいかなる仕事にも就けない状態になった場合、65歳まで毎月保険料が支払われる保険です。
保険料は月額15万円の給付で男性30歳の場合は2,794円。
これさえあれば不慮の事故や病気で仕事が出来なくなっても安心だね!と思ってしまいそうですが、本当に安心なのか?
考えをまとめてみようと思います。

就業不能状態となってから最初の180日間は支払いの対象外

不慮の事故や病気で就業不能状態となった場合でも、最初の180日間は給付を受けることができません。
これはおそらくこの就業不能保険が個人事業主を対象としているわけではなく、むしろサラリーマン層がターゲットなのでこのような条件になっているのだと考えられます。
収入が無くなった時の備えとして月額15万円の保険を考えているなら180日間分は貯金しておかないとダメだということです。
15万円 * 6ヶ月 = 90万円
90万円は万が一の時のために置いておきましょう。
まぁ個人事業主の場合は取引先の影響なんかで急に仕事が無くなることもありますから、これぐらいの貯蓄は常に必要ですよね。むしろ全然足りない。

年金制度が変わっても給付は65歳まで

65歳まで毎月給付を受けられるというのは年金を意識してのことなんだと思いますが、もし将来的に年金の受給年齢が引き上げられても所得補償保険は65歳までしか受けられません。
今30歳のひとが65歳で年金を受け取れるということはまず無いでしょう。早くても70歳ぐらいかな。
年金を受け取れるまでの空白期間を埋めるだけの貯金は別に用意しておきましょう。
仮に5年間と仮定すると
15万円 * 12ヶ月 * 5年 = 900万円
年金受給開始までの空白期間を食いつなぐには900万円必要となります。

35年間の合計保険料から考える元が取れるライン

男性30歳から65歳までの35年間支払った場合の合計金額を計算してみます。
2,794(月額) * 12ヶ月 = 33,528(年間)
33,528 * 35年間 = 1,173,480
35年間で支払う合計保険料は1,173,480円です。

月額15万円の給付を受けるとして元を取るためには
1,173,480 / 150,000 = 7.8232(ヶ月)
約8ヶ月分の給付を受ければ元が取れることになります。

この計算結果は65歳までフルに加入した場合を計算しましたが、実際は55歳ぐらいまでの加入でいいんじゃないかと思います。
64歳で就業不能状態になったとしても、給付される最大金額は90万円ですからね、焼け石に水すぎる。55歳だと最大1710万円。
子供が大学卒業して、ひとりで生きていけるようになったら切っていい保険なんじゃないかな。
30歳から55歳まで25年間加入した場合で計算すると
33,528(年間) * 25年間 = 838,200
総額838,200円です。100万円を切るとグンと安くなった気がしますね。

ちなみに、一生働けないような重度の障害を伴う病気や怪我の場合でも毎月給付を受けながら保険料も支払う必要があります。
実際は15万円から2,794円を引いた金額が手元に残るということになりますね。
また、もし重度の障害などで65歳まで回復が見込めない場合でも途中で死んだらそこで給付はストップします。

65歳まで就業不能保険の給付を受けられて、障害年金が貰えないケース

就業不能状態になって給付が受けられるパターンは大きくわけて2パターンあります。

1.一時的に就業不能状態になって、180日以上その状態が継続する時
2.就業不能状態になって、65歳までに回復が見込めない時

1のパターンは複雑骨折や大掛かりな手術を受けた場合が該当するケースでしょうか。
そんな場合でも何年も入院することにはならないでしょうから長くても半年の入院でしょう。
180日の待機期間を差し引くと3ヶ月分の支給、45万円の給付ですね。雀の涙やん。
このパターンのためにわざわざ保険に入って備える必要はありません。

2のパターンは日常生活に支障をきたすほどの障害を持った場合が一番想像しやすいです。
車椅子生活や、寝たきり生活ですね。こうなると65歳まで継続して毎月給付を受けることが出来ます。
でもこの場合って障害年金を受給できるんじゃないですかね。
いかなる仕事にも就けない状態で、障害年金を貰えない状態というのがどんな状態なのか・・・
がんばって想像してみたらこんなパターンを思いつきました。

・慢性的な激しい腰痛
・うつ病や統合失調症などの精神疾患

どちらもフリーランスなITエンジニアに取っては可能性の高い要因ですね。
特にうつ病はIT業界で多い病気なので恐いです。自分の周りでもうつ病になって仕事が出来なくなったひとが数人います。
実はこのような腰痛や精神疾患は給付の対象として認められていません

Q. 就業不能給付金を受け取れない病気やケガについて教えてください
A. 「うつ病」などの精神障害が原因の場合や、「むちうち症」や「腰痛」などで医学的他覚所見がみられない場合は、支払いの対象外です。

http://www.lifenet-seimei.co.jp/product/disability/faq.html

なんということでしょう。万が一の事態に備えるための保険なのに、万が一の事態が起きても保険は給付されません。
入院や在宅療養による治療が必要で、かつ、そのために就業することはできないと医学的に判断されることが条件になっています。
これはライフネット生命以外の所得補償保険でも同じです。個人向けでは無い保険であればうつ病が対象になるのもあるのですが・・・
もし個人で入れる所得補償保険でうつ病が支給対象になっている保険があるのなら教えていただきたいぐらいです。
これは想像なのですが、うつ病を対象にしてしまうと保険金詐欺の被害が増えるからなのかなと思っています。
うつ病は演技力さえあれば誰でも診断書を貰えるのが問題なんでしょうね。精神的な病気はこの辺りが難しいところです。

というわけで「65歳まで就業不能保険の給付を受けられて、障害年金が貰えないケース」というのは、
65歳以降に回復が見込まれる病気やケガ
これぐらいじゃないでしょうか、かなり限定的ですね。。。

まとめ

フリーランスなITエンジニアとしてはライフネット生命の就業不能保険で完全な安心は得られないという結果になりました。
どれだけの保障が必要かということも障害年金が出るか出ないかで変わって来ますし、判断が難しいです。
どうしても月々50万円の保障が無いと生きていけない!というひとなら障害年金を補うという形で入る価値のある保険なのかもしれませんが、10~20万円程度であればあまり意味のない保険です。
結局、うつ病や腰痛などの事態に備えるには日々の健康管理と貯金しかありません。
毎朝のラジオ体操がいちばんということですね!

もし就業不能保険を検討する場合は、支払い条件をきっちりと確認しましょう。
せっかく保険に入っていたのにいざという時に保険金が支払われないなんてことにもなりかねませんからね。
支払い条件の確認ポイントについてはこちらに詳しく載っていました。

就業不能保険に加入するときは保険金支払い条件をしっかりと確認

就業不能保険に加入するときは保険金支払い条件をしっかりと確認

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就業不能保険は、病気やケガなどで仕事を続けることができなくなった場合に、支給されなくなった給料を補完するという、きわめて安心感のある保険です。支給に関しては条件がありますので就業不能保険の加入時に必ずその条件をチェックしておくことが重要です。

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